−佐藤博特集−


月に一度は更新したいんです。本当です。でもこんなに間が空くんです。何故なんでしょう(爆)。

 今回は、久しぶりの個人特集、久しぶりの日本人ミュージシャン「佐藤博」特集です。前からやりたかったんですが、LPでしか持ってなかったアルバムをCDで手に入れたので今回実現。ミュージシャンズ・ミュージシャンという言葉がこれほど似合う人もなかなかいないでしょう。ノリという、譜面に書けない部分に多大な魅力を持ったこの人のピアノを聴くと、所詮譜面というのは音楽にとっては後付けでしかないということ、音楽というのは元々筆舌に尽くしがたいものだから素晴らしい(おっとこれは近藤房之助氏の名言だった)ということを思い知らされます。小生の二大フェイバリット・ミュージシャン「石田長生」「山下達郎」のどちらとも多大な関わりを持つこの日本一(世界一の可能性あり)ファンキーでブルージー(でエッチ)なピアノを弾く御仁、是非その天才的なキーボードプレイの凄さとサウンドプロダクトの素晴らしさを多くの人に知っていただきたいものです。



AWAKENING
 「BLUE AND MOODY MUSIC
  (Wendy Version)」


 佐藤博 feat. Wendy Matthews
 from:『AWAKENING』



 佐藤氏がアメリカ在住中にシンガーのウェンディ・マシューズをフィーチュアして作ったアルバムがこの『AWAKENING』。ここで佐藤氏は現在までずっと続いている、リン・ドラムをはじめコンピューターやリズムマシン類を自分で打ちこむことにより殆ど全てのバックトラックを作成するという手法を初めてとっている。結果としてクールな触感となっているのは当然として、そこにウェンディや佐藤氏のヴォーカルが実にうまくはまっているのはさすが。
 キーボードを自分一人で全てこなしているのは当然として、曲によっては佐藤氏自身による実に見事なギターカッティングも聴かせてくれ、マルチ・プレイヤーとしての面目躍如。で、ギターに関しては佐藤氏以外にプレイしているのは松木恒秀氏、鳥山雄司氏、そして山下達郎氏(!!)の3人である。で、アナログ時代のリリースではこの「BLUE AND MOODY MUSIC」はアルバム(Vo:佐藤氏)とシングル(Vo:ウェンディ)ではバージョン(バックトラックも)が違っていたが、CDではシングルバージョンもボーナストラックとして収録。今回はこのシングルバージョンを紹介したい。佐藤氏Voバージョンではスローに演奏されたこの曲、シングルを意識してかこのウェンディVoバージョンはアップテンポで小気味よく展開される。未だコンピューターミュージックの黎明期であるこの時期(1982年)に、ここまでヒューマンなグルーヴを作り出せるのはいくらベテランミュージシャンとはいえ驚愕ものである。
 また、それをさらにドライヴさせているのがギターで、このバージョンでは達郎氏と鳥山氏のツインギターという珍しい布陣。中央のコードカッティングが達郎氏で、右の単音カッティングが鳥山氏である(おそらく)。ソロこそないがギターファンも必聴の一枚。



FOR YOU
 「FUTARI」

 山下達郎
 from:『FOR YOU』

 PIANIST:佐藤博

 山下達郎氏が佐藤氏を「一番好きなキーボード奏者」と公言しているのは有名な話で、なにせこの大ヒットアルバムでも、当時グリーンカード取得申請中のためアメリカを出られなかった佐藤氏の音を録るためわざわざ青山純・伊藤広規両氏をつれて自分がアメリカに出向いて向こうでレコーディングしたというエピソードがあるほど、佐藤氏のプレイは達郎氏の信頼を得ている。
 で、さすがそこまでして録音する価値のあるプレイを佐藤氏は見事に決めている。この曲でのイントロのピアノ、途中の音符のハネ、転がり方は単に指がよく動くだけのピアニストとは一線を画する。なんといっても小生にとって佐藤氏のキーボードの魅力はリズムであり、どうということないフレーズをポロンと弾いてもあれだけハネる人はそうはいない。それが見事に個性となり、聴くと一発で「あ〜佐藤さんやな〜」と分かってしまう凄さ。それゆえに多くのミュージシャンから信頼を得ているわけで、この曲でも歌のバックでのトリルやオブリガードなど、譜面づらだけ追っても理解できないそのリズムの素晴らしさを多くの方に自分の耳で知ってもらいたいものである。



遠い昔ぼくは
 「田舎者」

 大塚まさじ
 from:『遠い昔ぼくは』

 PIANIST:佐藤博

 佐藤氏のピアノの妙技が聴けるセッション参加作品をもう一つ。この大塚まさじ氏のアルバムは石やんプロデュースで、佐藤氏はじめ元「THIS」のメンバーが関わっている曲も多い。で、ピアノに関しては佐藤氏と国府輝幸氏が分け合っており、どちらも個性的なピアニストなので聴きわけるのも楽しいかも。で、曲によっては石やんプロデュースなのに関係の薄そうな細野晴臣氏がアレンジし(細野氏といえばYMO作る際に最初は教授やなくて佐藤氏をメンバーに考えていたという話しもある)、ムーンライダースのメンバーが石やんと共にバックを担当していたりと結構興味深い組み合わせも見られる。
 で、アルバム最初のこの曲は4ビートのジャジーなアレンジ、というよりは完全にジャズであり、スイングする演奏の中をまさじ氏のヴォーカルが飄々と歌い上げている様は実に気持ちよい。バースはまさじ氏の歌と佐藤氏のピアノのみで、まさじ氏のボーカルを見事にバックアップしている。ここでも上の「FUTARI」と同じく転がるようなパッセージで実に心地よいハネを聴かせてくれ、こういうピアノをバックに歌えばそら気持ちええやろとまさじ氏が羨ましくなる(笑)。もちろん石やんのギターをはじめとする他のメンバーもそのスイングに一役買い、リラックスした中でお互いがお互いを鼓舞する様は圧巻。しかし、こんな凄いピアノを弾く人がこの楽器始めたの二十歳すぎてから(!!)やなんて、天才は世の中に実在すんねんなぁ(凡人の溜息)



HAPPY & LUCKY
 「DANCE」

 佐藤博
 from:『HAPPY & LUCKY』

 

 小生が所有している佐藤氏のソロアルバムの中ではこれが一番新しいものである。下の『SALING BLASTER』の項でも書いたのだが、小生はことソロミュージシャンとしての佐藤氏に関しては、そのブラックミュージックのテイストにこよなく愛着があるので『SALING〜』以降のは何枚か持ってますがそこがどうも淡泊になってしまった感じがしてそれほど積極的に聴いてなかったのですが、このアルバムの中でセミ・インストチューンであるこの曲はポップな中に『SALING〜』の持っていた黒さを再び感じさせる佳曲である(忘れた頃にこういうのを作るから油断できないんだよな〜>笑)。
 山岸潤史氏のギターもバッキング・ソロ共に渋く、4ビートにリズムが変化してからの続木力氏のハープソロも見事なこの曲、その後ろでの佐藤氏のシンセによるランニングベースのセンスの良さなどはさすがの一言。小品ながらファンキーな味わいは素晴らしい。こんなんもっとやって欲しいっすあたしゃ。
 それはそうと、1曲目「Rain」の作詞をしている「永井隆」って、ウエストロードのホトケさん?いや、芸風違うしまさかとは思うけど。真相を知ってる方はご一報を。



SALING BLASTER
 「SWEET INSPIRATION」

 佐藤博
 from:『SALING BLASTER』

 

 最後は小生が佐藤氏のソロアルバムで最も好きな『SALING BLASTER』から。石やんディスコにも掲載してある通り、石やん率いるボイス&リズムと山岸潤史氏が参加したぶっとびインストチューン「HOW YA BEEN(DO NAI?)」を収録してあるこのアルバム、独自のブルージーなアレンジを施し完全に自分のものと昇華したビートルズナンバーや、鳥山雄司氏のギタープレイもご機嫌な8ビートナンバーの「JENNY LOU」など聴き所満載なのだが、なんといってもこのアルバム全体の聴き物は、打ち込みでこんな真っ黒な音を作れる佐藤氏の天才性である。中でも「EIGHT DAYS A WEEK(これのピアノソロ最高!)」「SHINE FOREVER」の黒さは腰砕けもので、特に「SHINE〜」など、シンセがピコピコ鳴っているのにあれだけブルージーなのはハープの妹尾隆一郎(「HARMONICA特集」参照)、ギターで参加の元ウエストロードの中島正雄(なんと現在は日本コロンビア社長ですよこの人)両氏のせいだけではなくやはり佐藤氏のオルガン・ピアノのプレイとサウンドプロダクトの凄さの結果だと確信している。
 で、今回取り上げるのはそのトップを飾るポップチューンである「SWEET INSPIRATION」。佐藤氏の曲の中でも名曲中の名曲との呼び声高く、この曲をタイトルにした佐藤氏のファンサイトも存在する(いつもお世話になってます>私信)。歌詞はタイトルどおり大甘のラブソングであるが、ファルセットも駆使した佐藤氏のボーカル(とコーラス)が実に巧い。この人、鍵盤奏者としての世間の評価とはうらはらに自分はシンガーであるという意識が非常に強いというインタビューを読んだことがあるが、確かに氏のボーカルは楽器奏者の余技という域をはるかに超えた見事なものである。なんせイントロに被さるファルセットの「Oh〜〜〜〜〜Yeah」で既にイッてしまう小生であった。
 個人的好みで言えば、これ以降の佐藤氏のアルバムはポップ色が強くなり、ここで見られるようなアーシーな音づくりが薄れていくのがちと残念である(もちろんそれでもクォリティは変わらず相当なものだが)。ポップとアーシーのバランスが最も絶妙なこの『SALING BLASTER』のようなアルバムをまた一枚作ってくれることを夢見て今回の棚鷲はここまで。







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